さよなら、愛犬

「生涯で3頭の犬と暮らす」。
具体的にそう思ったのはいつだっただろう?

小学生の頃から、私は犬につける名前のリストを作っていた。想像の世界では名前の数だけ犬がいて、どの犬も私の犬だった。

私は大して動物好きではない家庭に突然変異的に生まれてしまった異様な犬好きで、残念ながら貧乏でもあったので、犬を飼うというささやかな夢が叶ったのは成人して貯金してからやっとの事。周囲の犬好き仲間は当たり前に犬好き家庭の出身で、もう2頭目、3頭目と暮らしていた。

最初の愛犬を迎える頃、世間には大型犬が溢れていた。中学生の時にアイリッシュ・ウルフハウンドが飼いたいと大それた事を考えていた私は、勿論大型犬が欲しかった。成犬のジャーマン・シェパード・ドッグをあげようか、という話もあり、見に行って気に入ったものの、当時はペット可物件が少なく、大型犬可の物件などはさらに無く断念した。

ようやく見つけたペット可物件は「柴犬位のサイズなら」という事で、愛護団体経由で小ぶりな雑種犬を迎えた。私に物凄く愛護精神が溢れていた訳ではない。アイリッシュ・ウルフハウンドやシェパードが飼えるなら、普通にお金をはたいて買っていただろうから。単に飼える大きさで欲しい犬種、無理なく生活できそうな犬種が無かっただけ。

ところがこの妥協して飼った雑種犬、5カ月齢と仔犬らしい時期を逸していながら(貰い手が無かった理由はおそらく偏食だったせいだけれど私が怖いのか高価なフードを与えたせいか我が家では問題なし)*1大当たりで、磨けば磨くだけ輝き、犬雑誌のミックス犬コンテストに入賞するし、その実力の賜物か同雑誌のカレンダーに私が撮った写真が採用されるし、若い頃は他人に興味が無かったのにどんどん外向的になり*2、ドッグショー観戦に行けば雑種ながら人気者という名犬に。

「オンリーワンの雑種だから、ペットロスどうしよう。同じ犬種なんていないのに」。

愛犬との生活が長くなっていくにつれて思い始めた事が現実に。
雑種だから丈夫で長寿だろうと思っていたのに、愛犬は悪性リンパ腫によりまさかの早世。*3
愛護団体の規約で避妊手術は必須。私としても繁殖させる程の余裕があったら最初からシェパードを飼っていただろうから、愛犬の遺伝子が残らなかったのは仕方のない事。*4

愛犬と暮らす間、大型犬ブームが過ぎ、コーギーブームが過ぎ、ダックスブームと同時に多頭飼育ブームがピークを迎え、私もやはり2頭飼いを夢見たものの難しく*5、ペットロスを乗り切るには次の犬を早く迎えるしかない、飼い主のいない犬は生きて行けないし、愛犬は、うちに来る前に愛護ボランティアさんの家で沢山の保護動物を見てきた筈だから理解してくれるだろう。
そう思って愛護団体の犬猫里親会に行くと、意外な対応が待っていた。東京近辺ではそもそも仔犬の保護犬が少なく、譲渡条件がとてつもなく厳しくなっていた。*6

ボランティアに参加してみたり、毎日毎日ネットで何件も里親募集サイトを見たりしても縁が無く、いつしか愛犬と暮らした期間よりもペットロス期間の方が長くなり。

「次が最後の犬」。
そう決めたのも、いつだったか分からない。

綺麗事だけでは生きていけない。寿命がある限り期限はある。
自分だけなら夢の世界で生きていけるけれど、私は犬と暮らしたい。犬の寿命よりも、自分の寿命が長くなるように計算しなくてはいけない。

だから、雑種の保護犬が欲しいと頑張るのもあと2年程度。それが過ぎたら小型犬のブリーダー購入を検討しよう。私はそう決めている。

頭目と3頭目の愛犬とはさよならしたけれど*7、2頭目の犬とは、まだまださよならを言うつもりはない。

こんにちは愛犬。20年、短くても15年一緒に暮らせますように。どこかで待っていてくれますように。


*1:ペットショップの感覚では3カ月過ぎたら売れ残り感が漂う気がするけれど、雑種なので少し育っていた方が性格と体格の予想がつきやすいので私的には丁度良かった

*2:日本犬に洋犬が混じったような雑種だからか?この変化は1頭で2度楽しかったのですっかり雑種派になった

*3:10歳2カ月の若さで亡くなったので、私は念願の愛犬と丸10年過ごせていない

*4:雑種という事は遺伝形質が安定しないという事なので、繁殖するとしてもまずそっくりな相手犬が見つからず、奇跡的に1頭そっくりな仔犬を繁殖できたとして、副産物のきょうだいの「ただの雑種の仔犬達」を幸せにできるかと考えると…アイリッシュ・ウルフハウンドを飼う方がきっと簡単

*5:多頭飼育がエスカレートするのを見かねてか、どこかの犬雑誌が「緊急時にも対処できる頭数を飼うのが最先端の考え方」と書いていて感心した。311なんか想像もつかなかった時に

*6:保護犬の価値が上がるのは喜ばしい事だけれど、上から目線の人も居たしペットロスの身には堪える

*7:頭目までもが短命だったら、私の寿命がまだまだあってもさすがに3頭目は飼えない